「……フレンチ・キスってさ」 「何だ?」 「フレンチ・キスって、よくみんな誤解してるけど、軽いキスのことじゃないんだよね」 「また貴様の薀蓄か」 「昔、イギリスとフランスってめちゃくちゃ仲悪かったの知ってる?」 「高校の世界史の範疇だな」 「庵って博識だよね。知識を鼻にかけたりしないところも厭味じゃなくて好き」 「貴様に言われると、却って莫迦にされているように感じるのだが」 「またまた。で、とにかくイギリス人とフランス人はお互いの悪口を言いまくってたわけ。フランス語でジョンブルって言ったら、イギリス人をバカにした呼び方だし」 「ふむ」 「イギリス人は、舌を絡め合う、あんまり上品じゃないくちづけを『フランス人みたいだ』って揶揄してたのね。それで、フレンチ・キス」 「下品な接吻が好きなのか」 「……まあ、少なくとも、人前でするキスじゃないでしょ。ベッドの上じゃ、誰の視線もないわけだし」 「恥ずかしいことを言うな」 「みんな恥ずかしいことが好きなんだよ、きっと……今、日本でフレンチって言ったら、おしゃれの象徴というか代名詞みたいな感じじゃん。だから勘違いが広まっちゃんじゃないかと」 「いつも中途半端に論理的なのだよな、貴様は」 「だって双子座のO型だもん」 「そういうところもだ。血液型も星占いもまったく論理的ではない。それを信じる貴様の神経が判らん」 「その辺が双子座のO型らしさなの」 「やけに強調するな……まあいい、ほら」 「……何? どしたの、これ?」 「――あと、三〇秒」 「もしかして……プレゼント?」 「……」 「憶えてたんだ」 「好きな奴の誕生日を忘れるほど、俺は莫迦ではない――」 「……」 「……」 「――下品なキスは嫌いじゃなかったの?」 「プレゼントの一環だ」 「サンキュ。このキスと言葉がおれにとって一番のプレゼント」 |
うわ短い。小説より掌編と言った方がいい気がします。
とにかく、お二人へのバースデイプレゼントです。
ト書きを一切排したのは、時間がなかったせいもありますが(泣笑)、
作者が四の五の言うよりも二人の間に流れる空気が表現しやすいか、
と考えたからです。黙して語らず。行間から何かがにじみ出ていたら私の勝ちです(誰に?)
ちなみに私も双子座のO型です。単なるささやかな自慢です(笑)
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